今の気分を一言で言い表すと、不愉快。


「だから?」
「そういうこと」
「どういうことだよ」

また溜息。こいつはいつもいつも溜息ばかりで飽きないのか。わたしは厭きたよ不愉快になるほど。ああ不愉快だ。不愉快。愉快に非ずと書いて不愉快。なんか違う気もする。まあいいそんな細かいことはどうでも。不愉快イコール楽しくない。それでいい。つまらないとは違う。イラついてるとも言う。それもどうでもいいな。ああ不愉快だ。

「で?」
「何が」
「ぼくにどうしろって言うの」

思いつくまま並べてやったら殴られた。というかはたかれた。痛い。それなりに痛い。最近とみに容赦がなくなっている気がする。おかしい。どこで育て方を間違ったのか。

「馬鹿があんまりにも馬鹿なことを言うから」
「言わなきゃやってられない心境を察して」
「知ったことじゃないね」

そういって背を向けたゲンガーに飛びついた。ら、こけた。二人して。フローリングの床からは結構痛そうな音がした。わたしは当然無傷。当たった背骨は少しばかり痛かったけど、許容範囲。

「そろそろ本気で殴っても良い気がしてきた…」
「まあそう言うな」
「しね」

急に立ち上がった背中から放り出された。ひどい。悔しいからもう一度手を伸ばす。振り払われる。懲りずにもう一度伸ばす。振り払われる。以降繰り返し。

「ああもう。うざい」
「うざいとか言うな」

今日一番の溜息を吐いて、ものすごく嫌そうに手を伸ばしてきたから両手を差し出してやった。さらに溜息を重ねて、抱きあげられる。

「もうほんと、なんなの」
「不愉快なの」
「知らないよ」

体全体でうんざりしながらも、お気に入りのソファまで運んで行く様子に満足。育て方は間違っていないらしい。うん。楽しくなってきた。

「やつあたりとか、他でやってくれる?」
「いやだ」
「さいあくだこいつ」

拗ねた横顔にキス一つ。だってゲンガーがいいだもん。そう言ったらまた殴られた。だから痛いって。

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