今日も一日最初の儀式を終え、朝食のメニューを考える。
ヒヨコ豆は欠かさないとして、はてさてミルクを加えるべきか否か。


「ハーヴェイ、ごはん出来たよ」
応えはないのがわかっているので、少し辺りをうろついてみる。
右、左、あのひょろっとした背中は見えない。気配もない。
結果、ぱたぱたと足音をさせて探しに行くことにした。
急がないとスープが冷めてしまう。
エントランス、いない。リビング、いない。客室、いない。
元が診療所なだけに、探すとなると一苦労だ。
「もう…ハーヴェイのばかっ」

結局、今日は彼の自室のバルコニーにいた。
桟に直接座り込んで、自身の足元を無表情に見やっている。
どうやら日によって座り込む場所が決まっている様で、
そこが見つかるまではフラフラと家の中を危なっかしく歩き回る。
一たび場所が決まれば、一日のほとんどをそこで過ごすのだ。

「今日は何を見てるの?」
横に座り込んで、肩越しに足元を覗き込む。
「あ…」
花が咲いていた。小さな花だった。
植木鉢の上で細く頼りない体を懸命に伸ばして、太陽の恵みを受けている。
「そっか…花、咲いたんだ」
自分達がこの診療所に住み始めたとき、植えた花だった。
咲いたら一番に見れるようにと、彼の部屋に置いた花だった。
「なんか、うれしいね」
言って、横の顔を見上げた。
表情は特に変化がなかったが、視線は花に注がれたままだ。
それで、充分だった。

「あのね、朝ごはんができたんだけど」

穏やかに自分たちをすり抜けて吹く風がきもちちいい。
空を見るまでもない。きっと今日も良い天気だ。

(キーリ/ハーキリ/春です)


「嫌い」
「うん」

無表情に吐き捨てる
それでも笑顔を崩さない貴方が嫌い

「嫌い」
「うん」

憎しみを込めるだけ込めて睨みつける
それでも眉一つ動かさないアナタが嫌い

「ダイゴさんなんか大嫌い!」
精一杯の強がりで叫んでみても

「うん」
それでも一つとして揺るがない貴方が嫌い


ぎゅっと抱きしめられて耳元で
「きらいでも、すき」


それでも貴方を愛する愛が嫌い

(ポケモン/ハルカとダイゴ)


ぎゅぅ
「…ヒョウタさん」
私はため息を吐きながら、背中の熱に呼びかける。

「何?ヒカリちゃん」
何、じゃない。

「何をしてるんですか一体」
「愛情確認だよ」

………いや照れてる場合じゃなくて!

「だから、具体的に何をしてるのか、
 30秒以内200文字以上でで答えてください」

そして私からさっさと離れてください!
そう叫ぼうと振り返った瞬間。

「……………」

「さて、今ボクは何をしたのか、
 30秒以内200文字以上で具体的に答えてね」

「いや、えっと、その、く、口…」

「チッチッチッチッ…はい30秒だね残念。罰としてもう一回」

そんな!


(ポケモンDP/ヒョウタさんとヒカリちゃん)



「あぁお前か。久しぶり」
「久しぶり。最後に会ったのはナナシマだっけ」
「違うだろ。セキエイ高原だって」
「あれ、チャンピオン決定戦が最後だっけ」
「そうだよ。お前誰と間違ってるんだ」
「さぁ誰だったかな。それよりおめでとう」
「は?なんだよいきなり」
「だってとうとう捕まえたんでしょう彼女」
「あ、あぁ。まぁな。なんだよそんな改まって」
「別に改まってはいないんだけどお祝いぐらいはね」
「まあお前には随分愚痴ってたしな」
「愚痴られたねぇ。君にプレゼントの良し悪しとか聞かれた時はどうしようかと。
 でも無事にゲット出来て何よりだよ」
「…礼とか言ってやってもいいぞ」
「はいはい。君が素直にお礼を言うなんて奇跡だねぇ。彼女の影響かな」
「う、うるさいぞお前っ!」
「わー照れてる」
「すげぇ棒読みだな」
「感情込めてどうするの」
「………確かに」
「さて、そろそろ行くよ」
「もう行くのか」
「これで意外と忙しいんだよ。チャンピオンってのも」
「お前…嫌味か」
「わりと。良いじゃないか今幸せ一杯なんでしょう」
「うっせー」
「はいはい。じゃあね、彼女だけじゃなくてマサラのお姉さんにもちゃんと顔出すんだよ」
「ほんと煩いなお前…あのさ」
「ん、何?」
「おれ、ずっとお前がすきだったんだ」
「…馬鹿だね」
「ほっとけよ。じゃあな」
「うん……ほんと、馬鹿だね」




遅れてきた夢物語
ちょっと遅すぎやしないかい、神さま


(ポケモンFR.LG/主人公♀とライバル)


「あの、あの、ダイゴさん!」
「なにかな、ハルカちゃん」
「あの、えっと、その(なにとかそれわたしがききたい!なにそのえがお!まぶしいって!)」
「その?」
「ええぇっといいぃい天気ですね!(なにいってんのちょっとべたにもほどがあるんだけど!)」
「うん。いい天気だね」
「ええぇとその、だから、つまり、(さぁいえ!いうんだわたし!)」
「つまり?」
「洞窟日和ですね!(もうだめだもうわけわかんないよわたしあぁおわった!)」
「…ああ、石探索にはいい日だってこと?」
「(ええぇなんですかそのほんやくむしろちょうやく?でもいいや)そうですそうですそうなんです!」
「そうだねぇ。こんな日はいい石が見つかるかもしれないねぇ」
「えええっとだからそのダイゴさん、わ、わた、わたわたわたしといぃいっしょに」
「じゃぁハルカちゃん、これから一緒にくらやみのどうくつに行かないかい?」
「………(そんなわたしよりさきにうそおぉぉ)……行きます」
「そうか。それは良かった」
「(つぎこそはいおうね、わたし)」
「(おもしろかわいいなぁ)」


(ポケモンRS/純情ハルカちゃんと悪い大人のダイゴさん)



(ありがとうありがとう)