「よしよし。いっぱい食べて大きくなれよー俺のルーク」 「………陛下」 「んー?」 その酷く楽しそうな声に腹が立つ。 「それ、いい加減に止めませんか」 「それって何だ?」 ニヤニヤと効果音が聞こえてきそうな笑顔。 確信犯だ。ぜーったい確信犯だ。 イライラ ムカムカ 自分の機嫌が急転直下で悪くなっていくのを感じる。 「そのブウサギの名前です。俺の名前使うの止めませんか」 つい口調が刺々しくなるのは俺のせいじゃないと思いたい。 「しかしルークもこの名前を気に入ってるしな。俺も変える気は特に無い」 嘘だ。自分が変えたくないだけだ。俺への嫌がらせに決まってる。 「またそんな嘘を」 「嘘じゃないぞー本当のことだ。なあルーク。…ほらルークもそう言ってる」 そう言って輝かしい笑顔でブウサギを撫でる陛下に、口元が盛大に引きつるのがよくわかった。 もういい。今日こそは。今日こそはガツンと言ってやる。 「陛下!」 「何だ」 「……………特に用事がないなら帰ります」 ……特に何も出てこなかった。ガツンと言うんじゃなかったのか、俺。 こういう時はジェイドみたいなよく回る口があればな、としみじみ思う。 「そうか。また来いよ」 ひらひらと手を振り、特に引き止めもしないピオニーにまた腹が立つ。 結局今回も遊ばれただけで終わってしまった。 「そーですか!じゃ失礼します!!」 どかどかと足音を立てて(また侍女達に怒られるけどかまうもんか!)不機嫌を隠さずに退室する。 背後で陛下が盛大に笑った気配がしたが、無視。無視。無視ったら無視! 次こそは改名させてやると心に誓った。 あなたにその名を呼ばれるのはおれだけでいい、とか、そんなこと、 口が裂けても 言えやしない。 |